比嘉大吾

先日行われたWBC世界フライ級タイトルマッチ。

前日の計量をパスできなかった比嘉大吾選手。

思い出したのは、その前大きく計量をパスしなかった山中選手の引退試合でのこと。

同じことはどちらも王座を剥奪された。

違うのは勝者と敗者。

山中戦でのネリは減量を真剣にしていたのか?

と疑いたくなるほどの重量オーバーで、違う階級と試合しているように見えた。

そしてあっさりと山中選手をKOし歓喜の声をあげていた。

比嘉選手の場合、前日計量時『汗がまったく出ない』と会長の弁があったが、

試合も減量失敗がまるわかりだった。

キレも威力もなく感じてしまう。

どれだけパンチを重ねても相手は涼しい顔のまま。

それはきっとそうだろう。

当日の朝まで飲まず食わずで、プロボクシングのリングに立てるわけがない。

当たり前といえば当たり前の話。

挑戦者は素晴らしく仕上がっている様子が画面越しにも伝わってきた。

動きはよく、パンチも重そうであった。

今回わかったのは、ネリは減量失敗してなかった。

減量する気がなかったんだろうということと、

減量という長く苦しい作業の連続こそが、プロボクシングの仕事ということなのだろうということ。

日々の練習は当たり前。

対戦相手への対策も当たり前。

すべてをひっくるめて、当日12R(12回戦の場合)戦えるだけの身体を作る。

その為にトレーナがつき、試合中もセコンドがつく。

少しでも身体に異常があれば、やはりプロの試合というのは命に直結してしまうから。

今回9ラウンドまで試合が経過したところで、棄権を伝えてTKO負けとなった。

正直9ラウンドも戦えていなかった。

初回から限界だった。

パンチを繰り出す比嘉選手の、戸惑いのような表情が焼き付いている。

2ラウンド目とか、3ラウンド目でタオルを投入しても良かった。

いつだってそうだけど、対戦選手も色々なものを抱えている。

家族を、貧困を、誇りを、名誉を。

想像でしかないけれど、ボクシングの試合はいつもそういう意地と意地をぶつけ合い、必ずどちらかが勝ち、どちらかが負ける。

残酷で、だからこそすがすがしく素晴らしいと言えるんだと思う。

比嘉と対戦したロサレス選手がTKOを宣告されたときの喜びの表情は、やっぱり感動を運んできた。

本来悔しさでいっぱいになるはずなのに、

今回の騒動で比嘉を非難することなく、体調を慮り最後まで真摯に試合を運んでいた。

すべてにおいて比嘉は負けていた。

完膚なきまでに突き落とされていると思う。

陣営側も同じと思う。

試合を組んだのは陣営だし、体調の管理だってしなくてはならない。

王者として絶対に失敗は許されないはずだった。

今回比嘉選手も陣営側も100%の謝罪をしている。

その通り。

擁護する余地はない。

でも振り返る暇はない。

 

いちボクシングファンとして言いたい。

それでも比嘉を応援したい。

もう一度立ち上がり、リングの上に立つ姿を見たい。

そして何より、もう一度沖縄の地にチャンピオンベルトを持ち帰ってほしい。

 

 

今はなにも考えられないとしても。

後悔の念に押しつぶされそうでも。

この試合をターニングポイントにしたなら、

立ち上がれ。比嘉大吾

 

 

 

2018.4/17